シャープは、ウイルス学の世界的権威であるロンドン大学医学・歯学部 ジョン・オックスフォード教授(Prof. John S. Oxford)が設立したGLP※3適合機関レトロスクリーン・バイロロジー社と共同で、プラズマクラスターイオンが、致死率が高いとされる浮遊高病原性『H5N1型トリインフルエンザウイルス』の働きを99%低減することを実証しました。
多種多様な空気浄化技術の中で、同ウイルスへの効果を実証したのはプラズマクラスターイオンが世界で初めてです。
2000年に開発したプラズマクラスターイオン技術は、空気中にプラスとマイナスのイオンを放出して除菌を行う空気浄化技術です。当社はアカデミックマーケティング※4の考えに基づき、この5年間世界の学術研究機関と共同で、この技術が空気中に浮遊する細菌・カビ菌・ウイルス・アレルゲンなど全26種類の有害物質に効果があることを実証してきました。さらに2004年11月には「細菌の表面細胞膜のタンパク質を破壊し死滅させるメカニズム」を解明し、「表面にタンパク質を持つ広範囲の浮遊有害物質への効果」が期待できることを学術的に証明しました。
今回効果を確認したトリインフルエンザウイルスは、実際にヒトにも感染し被害をもたらしたウイルスを用いたものです。これにより新しく出現したウイルスにも効果があることを確認し、プラズマクラスターイオンの効能の分野をさらに拡大させることができました。
容積1m3ボックス内にプラズマクラスターイオン発生装置を設置。プラズマクラスターイオンを発生させ(濃度7,000個/cm3)、高病原性トリインフルエンザウイルスをボックス内に噴霧しました。噴霧終了5分後から10分間吸引回収したボックス内のウイルスを細胞に接種し4日間の細胞の変化を調べました。
その結果、プラズマクラスターイオンを作用させていないウイルスを接種した細胞は、接種4日後で変形し破壊されているのに対し、プラズマクラスターイオンを作用させたウイルスを接種した細胞ではほとんど変化が見られず正常な状態を保っています。
このことから、プラズマクラスターイオンがウイルスの働きを99%低減させていることを確認しました。(ウイルス評価方法は、ウイルス研究分野で一般的に用いられているTcid50法を用いました)
プラズマクラスターイオンを作用させたウイルスと作用させていないウイルスを細胞に接種して、細胞のウイルス感染状態を免疫蛍光抗体分析法にて評価しました。本分析方法は蛍光物質によって細胞を染色し、細胞にウイルスが感染しているとウイルスが発光することで感染の有無を確認する、ウイルス研究分野で一般的に用いられている方法です。
プラズマクラスターイオンを作用させていないウイルスを接種した細胞はウイルスの感染による蛍光染色が見られるのに対し、プラズマクラスターイオンを作用させたウイルスを接種した細胞は蛍光染色が見られず、ウイルスが感染していないことを確認できました。これによりプラズマクラスターイオンを作用させたウイルスが感染機能を失っていることが明らかになりました。
インフルエンザウイルスには、ウイルス表面の2種類の突起(H:赤血球凝集素、N:ノイラミニダーゼ)の種類によってさまざまな型があり、この中でニワトリに感染し被害をもたらすウイルスとして、H5N1、H7N7、H9N2などが知られています。「低病原性トリインフルエンザウイルス」は、呼吸器、腸管のみで感染増殖し症状も軽微に留まるのに対し、「高病原性トリインフルエンザウイルス(H5N1)」は全身で感染増殖し、ニワトリにおいては100%近い死亡率となります。1997年以降、香港・オランダ・ベトナム・カンボジア・タイ・韓国・日本で、ニワトリに大きな被害をもたらしただけでなく、ベトナム・タイ・カンボジアにて感染しないと考えられてきたヒトへの感染が97人確認され、53人の死者が発生しました※6。今回の実証実験には、実際にヒトにも感染し被害をもたらしたウイルスを用いました。
対象有害物質 | 種類 | 実証機関 | 時 期 |
---|---|---|---|
真菌 | クラドスポリウム | (財) 石川県予防医学協会 | 2000年 9月 |
ドイツ リューベック医科大学(増殖抑制効果) | 2002年 2月 | ||
CT&T(ドイツ アーヘン応用科学大学 アートマン教授) | 2004年11月 | ||
ペニシリアム、アスペルギルス | ドイツ リューベック医科大学(増殖抑制効果) | 2002年 2月 | |
アスペルギルス、ペニシリアム(2種)、 スタキボトリス、アルテルナリア、ムーコル |
CT&T(ドイツ アーヘン応用科学大学 アートマン教授) | 2004年11月 | |
細菌 | 大腸菌 | (財) 石川県予防医学協会 | 2000年 9月 |
大腸菌、白色ブドウ球菌、カンジダ菌 | 中 国 上海市予防医学研究院 | 2001年10月 | |
バチルス菌 | (財) 北里環境科学センター | 2002年 9月 | |
CT&T(ドイツ アーヘン応用科学大学 アートマン教授) | 2004年11月 | ||
MRSA (メチシリン耐性黄色ブドウ球菌) |
(財) 北里環境科学センター | 2002年 9月 | |
(社) 北里研究所 北里研究所メディカルセンター病院 | 2004年 2月 | ||
シュードモナス、エンテロコッカス、 スタフィロコッカス |
ドイツ リューベック医科大学 | 2002年 2月 | |
エンテロコッカス、スタフィロコッカス、 サルキナ、マイクロコッカス |
CT&T(ドイツ アーヘン応用科学大学 アートマン教授) | 2004年11月 | |
アレルゲン | ダニ、花粉 | 広島大学大学院 先端物質科学研究科 | 2003年 9月 |
浮遊アレルゲン | カナダ喘息協会 | 2004年 4月 | |
ウイルス | H1N1型ヒトインフルエンザウイルス | (財) 北里環境科学センター | 2002年 9月 |
韓 国 ソウル大学 | 2003年 9月 | ||
中 国 上海市予防医学研究院 | 2003年12月 | ||
(社) 北里研究所 北里研究所メディカルセンター病院 | 2004年 2月 | ||
H5N1型トリインフルエンザウイルス | イギリス レトロスクリーン・バイロロジー社 | 2005年 5月 | |
コクサッキーウイルス | (財) 北里環境科学センター | 2002年 9月 | |
ポリオウイルス | (財) 北里環境科学センター | 2002年 9月 | |
コロナウイルス | (社) 北里研究所 北里研究所メディカルセンター病院 | 2004年 7月 |
[専 門]
ウイルス学
[著 書]
1) Influenza, the Viruses and the Disease(インフルエンザ、ウイルスと病気)
2) Human Virology, a Text for Students of Medicine, Dentistry and Microbiology
(人ウイルス学、医学、歯学および微生物学 学生のための教科書)
3) Conquest of Viral Diseases(ウイルスによる病気の克服)
[その他]
1) 「Second European Conference on Influenza」2005年9月、マルタ
2) 「Optimizing Antiviral Drug Therapy Symposium」2005年10月、ベルリン
3) 「The Central Role of Antivirals for the First Pandemic of the 21st Century」2006年1月、ロンドン
1836年創立のイギリス国立大学で、総学生数11万5千人、19のカレッジより成り、世界有数の規模を持つ。
ロンドン大学を構成するクイーン・メアリー校は、学生数約8,800人で、イギリス最古の医学学校であるLondon Hospital Medical College(1785年創立)とSt. Bartholomew's Hospital Medical College(1843年創立)の2校を吸収合併して創設され、医学・歯学部の他、生物、化学、物理、電子工学、コンピュータ、法学、文学、政治学など幅広い分野で教育を行っている。
アレキサンダー・グラハム・ベル、伊藤博文、ジョン・F・ケネディー、マハトマ・ガンジー、 H・G・ウェルズ、アーサー・C・クラーク。
ノーベル賞受賞者:7人。
ジョン・オックスフォード教授により1989年創設。ウイルス、薬品、ワクチン関連の研究・試験機関として設立され、本分野における先端機関として知られる。化学物質の安全性試験の実施において、高い信頼性を維持するための国際的な管理基準であるGLP(Good Laboratory Practice)や、品質マネジメントシステム基準であるISO9001の認可を取得している。
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