クローズアップ

シャープのプラズマクラスター技術が
世界で初めて
浮遊する新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)
減少効果を実証しました。

今回はその検証試験とともに、
試験の意義、今後シャープがプラズマクラスター技術でめざすもの、試験に対する姿勢をご紹介します。

※イオン放出式の空気浄化技術において(2020年9月7日現在、当社調べ)。

シャープが着眼した
新型コロナウイルスの
沫感染」

新型コロナウイルスの
感染経路は二つ

新型コロナウイルスの感染経路は「接触」と「飛沫」です。「接触」で付着した新型コロナウイルスは、洗剤やアルコールで洗浄・消毒することで感染対策が図れます。しかし、「飛沫」で空気中に浮遊する新型コロナウイルスへの対策はどうでしょう。室内換気や咳エチケットといった考えはありますが、浮遊する新型コロナウイルスへの積極的な働きかけは、まだ確立されていません(2021年1月現在)。

接触感染

新型コロナウイルスが付着した物に触れた手で、自分の口、鼻、目を触ったりして感染。

付着した新型コロナウイルスへの主な感染対策

  • 手洗い
  • 手指消毒
  • 身の回りの物の消毒

飛沫感染

空気中に浮遊する新型コロナウイルスを、吸い込んでしまうことで感染。

浮遊する新型コロナウイルスへの主な感染対策

  • 室内換気
  • マスクの着用
  • 人との距離感

「飛沫感染」対策に
プラズマクラスター技術を

私たちは絶えず呼吸をしています。この生理現象によって、何の違和感もなく、無意識のうちに、空気中の浮遊物が体内へ吸収されています。そう考えるとやはり、浮遊する新型コロナウイルスへの対策の確立は急務です。
シャープではこれまでにプラズマクラスター技術を使い、浮遊するウイルス・細菌・有害物質などの低減や作用抑制効果を実証してきました。「ネココロナウイルス」「SARSコロナウイルス」といったコロナウイルスへの効果も実証済です。この実績に、浮遊する新型コロナウイルスに対するプラズマクラスター技術の可能性を見出したことが今回の検証試験の始まりでした。

シャーププラズマクラスター

プラズマクラスター技術
果検証試験

未知のウイルスへの果敢な挑戦

試験が行われた2020年8月当時は、
新型コロナウイルスの実態がまだまだ解明されていない段階であり、感染に対する正しい治療法も手探りの状態。
試験を検証していただける機関がほとんどなく、技術検証を進めること自体が困難な状況でした。
その中で、これまでもエボラウイルスなど危険なウイルスの研究に従事されている
長崎大学の安田教授と南保教授にご協力いただけることになり、技術検証が可能となりました。

「地球規模で感染の広がる未知のウイルスから、人々の命と健やかな日常を守る。」
そんな先生方の専門家としての強い思いのお陰で、今回の技術検証が実施できました。

新型コロナウイルスへの
「プラズマクラスター技術効果検証試験」に
ご協力いただいた方々および機関

長崎大学 感染症共同研究拠点 安田 二朗 教授(兼 熱帯医学研究所教授)
エボラウイルスやラッサウイルスなどの高病原性ウイルスの増殖機構の解析、検出・診断法の開発、新規抗ウイルス療法の開発等に貢献。エボラウイルス、ジカウイルス、新型コロナウイルスなどの検査システムも開発。
長崎大学 感染症共同研究拠点 南保 明日香 教授(日本ウイルス学会理事)
エボラウイルスの感染機構を明らかにするなど、新たな手法によってウイルス感染の分子メカニズムを解明。治療薬の開発にも貢献。ウイルス感染に関し研究に取り組みながら人材育成部門長を務め、研究者の育成に従事。
長崎大学感染症共同研究拠点

長崎大学感染症共同研究拠点

高病原性ウイルスに関する研究を実施しており、現在、世界最高水準の安全性を確保した高度安全実験(BSL-4)施設を建設中である。研究成果を、地域社会をはじめ広く世界に還元することを目標としている。また本拠点を中心に、全国のネットワーク(BSL-4施設を中核とした感染症研究コンソーシアム)を活用しながら最先端研究の情報・技術を共有し、さらに、諸外国のBSL-4施設を有する研究機関との連携も進め、全国の研究者を支援する体制の構築を進めている。

検証試験の概要

試験実施機関
長崎大学感染症共同研究拠点・熱帯医学研究所
検証装置
プラズマクラスター技術搭載ウイルス試験装置
対照試験
上記装置のプラズマクラスターイオン発生なしとの比較
検証ウイルス
新型コロナウイルス SARS-CoV-2
プラズマクラスターイオン噴霧濃度
プラズマクラスターイオン発生装置付近 約1,000万個/cm3
試験風景

試験風景

試験方法

空気中に浮遊するマイクロ飛沫(2μm)を想定した状態での試験です。安全に配慮し、約3Lの試験容積で実施しました。

  • ① ウイルス感染細胞から調製したウイルス液を噴霧。
  • ② 噴霧したウイルス液にプラズマクラスターイオンを照射後、回収。
  • ③ 回収したウイルス液からウイルス感染価※1をプラーク法※2により算出。

※1 感染症を持つウイルス粒子の数。

※2 ウイルスに感染した細胞が溶解した際に、細胞溶解斑(プラーク)を形成することを利用した手法。

プラズマクラスター技術搭載ウイルス試験装置イメージ

プラズマクラスター技術搭載ウイルス試験装置イメージ

試験イメージ映像

効果検証結果

プラーク法によるウイルス回収液中のウイルス感染価測定

「プラークとは」
ウイルスは、隣接する細胞に感染を広げていきます。ウイルスが感染して壊れた細胞は、染色液に染まりません。すなわち、青くなりません。これをプラーク(細胞溶解班)といいます。プラークの数は、感染性ウイルスの数(感染価)を示します。

空気中に浮遊する新型コロナウイルスにプラズマクラスターイオンを約30秒照射することにより、感染価が91.3%減少することを実証。
新型コロナウイルス感染価の減少

空気中に浮遊する新型コロナウイルスにプラズマクラスターイオンを約30秒照射することにより、感染価が91.3%減少することを実証。

医療機関等の実空間での効果に期待

「効果検証試験を終えての総括」
新型コロナウイルスに対して、エアロゾル(マイクロ飛沫)を介した感染を想定した対策としては、現時点でマスク等の着用以外に有効策がありません。今回、シャープのプラズマクラスター技術によって空気中に浮遊した状態の新型コロナウイルスを不活化することが実証されたことは、未来につながる大きな一歩です。一般家庭だけでなく医療機関などの実空間で、抗コロナウイルス効果を発揮する可能性も期待できます。

長崎大学 感染症共同研究拠点/熱帯医学研究所 教授 安田 二朗

長崎大学 感染症共同研究拠点/熱帯医学研究所 教授 安田 二朗

シャープの
プラズマクラスター技術と
with コロナ

確かな実証結果で、
ウイルスと共存する未来へ

シャープのプラズマクラスター技術をもって、浮遊する新型コロナウイルスの減少効果が実証できたのは容積約3リットルの試験装置内です。コロナ禍の実際の生活空間に、シャープが自信を持ってプラズマクラスター技術をお届けできるのはまだまだ先のこと。しかし「新型コロナウイルス感染価91.3%減少」の確かな効果に、次のステージへの希望があります。
新型コロナウイルスへの正しい知識を積み重ねながら、新型コロナウイルスと共存できる「with コロナ」の新しい日常に、プラズマクラスター技術を役立てる研究を続けることがシャープの社会貢献の一つでもあると考えます。

プラズマクラスター技術で、
衛生的な空気環境づくりを

当社は2000年より約20年にわたり、プラズマクラスター技術の効果を世界の第三者試験機関と共同で実証するアカデミックマーケティング※1を実施しています。これまで多数の第三者試験機関で、「新型インフルエンザウイルス」「薬剤耐性細菌」「ダニアレルゲン」などの有害物質の作用抑制や、小児喘息患者の気管炎症レベルの低減効果※2などの臨床効果を実証するとともに、プラズマクラスターの安全性についても確認※3してきました。
自然の力を応用した「安全性」と実証された「確かな効果」で、健康的で、衛生的な空気環境を届けてきたシャープのプラズマクラスター技術。その真価が問われた新型コロナウイルスへの効果検証試験。新しい日常に、そして高い衛生管理を求められる環境に、今後も新たなプラズマクラスター技術の活用をめざし、研究を続けます。

※1 技術の効能について、先端の学術研究機関と共同で科学的データを検証し、それをもとに商品化を進めるマーケティング手法。

※2 2014年9月18日発表。

※3 (株)LSIメディエンスにて試験(吸入毒性試験、眼/皮膚の刺激性・腐食性試験、催奇性試験、二世代繁殖毒性試験)。

ロナウイルスについて

ウイルスとは…

「ウイルス」は、「毒液」または「粘液」を意味するラテン語の“virus”が由来。細菌や真菌よりもはるかに小さく、人や動物の細胞の中に入り込むことで増殖を続けます。病気の原因になるウイルスとして、インフルエンザウイルス、ノロウイルスなどがよく知られています。

コロナウイルスとは…

特徴的な突起を持つ形状が王冠に似ていることから、ギリシャ語で王冠を意味する「corona(コロナ)」という名前が付けられました。人間に感染するものとしては、人に蔓延している風邪のコロナウイルス4種と、動物から感染するコロナウイルス2種が確認されていました。

新型コロナウイルスとは…

人に感染する7種目のコロナウイルスとして、2019年12月に発生を確認。「SARS-CoV-2」と呼ばれ、非常に高い感染力で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を引き起こします。この新型コロナウイルスは、2002年に発生したSARS(サーズ)ウイルスに近しいとされています。

※大きさはおおよその目安です。

新型コロナウイルス感染症について(「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第3版」より抜粋)

確認されている症状

  • 発熱
  • 食欲低下
  • 筋肉痛
  • 息切れ
  • 嗅覚障害
  • だるさ
  • 味覚障害

典型的な経過

  • 発症〜1週間程度(風邪症状、嗅覚味覚障害)
    発症者の内 80%が軽症のまま治癒
  • 1週間程度〜10日(呼吸困難、咳、痰)
    発症者の内 20%が肺炎症状が悪化し入院
  • 10日以降(人工呼吸管理など)
    発症者の内 5%が集中治療室へ

* 中国における約4万症例の解析結果を参考に作成(Wu. JAMA 2020)。年齢や基礎疾患などによって、重症化リスクは異なる点に注意。

「ウイルス」「菌」「カビ」の違いと人への感染例について

ウイルス

ウイルス

人の細胞の中に侵入し増殖。自己増殖はしない。

主な感染症
感染性胃腸炎、インフルエンザ、かぜ症候群、麻疹、風疹、水痘、肝炎、帯状疱疹、エイズなど。
細菌(バクテリア)

細菌(バクテリア)

体内で定着し細胞分裂で自己増殖。人の細胞に侵入、もしくは毒素を出して細胞を傷害する。

主な感染症
感染性胃腸炎、腸管出血性大腸菌(O157)感染症、結核、破傷風、敗血症、外耳炎、中耳炎など。
カビ(真菌)

カビ(真菌)

人の細胞に定着し発育。酵母細胞では出芽や分裂によって増殖する。

主な感染症
白癬(水虫)、カンジダ症、アスペルギルス症など。
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