第1回
メビウスの新コンセプトについて
第2回
PC-MT1/PC-SX1デビューまでの道のり
第3回
PC-MT1/PC-SX1を生んだテクノロジー(1)
第4回 PC-MT1/PC-SX1を生んだテクノロジー(2)
第5回
これまでのメビウス・これからのメビウス
一度お店で手にとって金属筐体の質感を味わって見てください。
ひと目でメビウスだと分り、自分自身が本当に欲しい個性的なモバイルPCを今後も追求し続けたいと思います。
まさにモバイルのためのパソコンとして、十分にご満足頂ける製品に仕上がっていると思いますので、お手に取ってご確認ください。
モバイルへの想い入れと苦労の結果を喜んで頂けると嬉しいです。
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PC-MT1に関しては、“モバイルコンシャス”というコンセプトは具体的にどの部分に現れていますか?
松村
まず一番大きい所で言うと
『ポップアップ式キーボード』
です。これは口で説明するよりもまず見ていただきたいので、ぜひ
模式図
をご覧ください。表示部を開くとその動きに連動してキートップが自動的に持ち上がっているのがわかると思います。表示部を閉じるとキートップが本体上キャビネット面と同じ高さになるように収納されます。この新機構により3mmストローク・18mmピッチの使いやすい、快適タイピングを実現しました。
ポップアップ式キーボードのヒンジ機構部
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どのような仕組みになっているのですか?
古田
ヒンジ機構部分にリンクと2つのカムが入っているのですが、表示部の開閉がある一定の角度に達するとその動きに連動して中のカムが回転し、ヒンジが倒れ、キーボードとの接点部分・メンブレンを左右にスライドさせることによってポップアップさせる構造になっています。回転の移動量を横方向に伝える非常に特長ある構造で、他社の商品にはない当社独自の技法です。キーが自動的にポップアップし、収納される一連の動きを、お客さまにも店頭でぜひ試していただきたいです。
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特殊なキーボードだけに搭載するにあたって苦労はありませんでしたか?
松村
ありました。ポップアップ式キーボードを採用するがゆえに出てきた問題というのがいくつかありましたね。まず1点目はメンブレンを左右にスライドさせるだけのスペースが必要なので、キーボードそのものは本体の端から端まで目一杯は使えず、当初予定していたサイズよりは若干小さくなりました。また一般的なノートPC用のキーボードでは「Fnキー」や「半角/全角キー」などのように一部幅の狭いキーボードが入るものが多いのですが、今回上下させる特異な構造上、キートップの幅に制約が有り、本来なら小さくできるキーボードの幅も大きく取らざるを得なくなりました。その結果、キーボードの数を普通のものよりも減らすことになりました。今までのキーボードレイアウトをそのまま採用することができなくなりましたので、ファンクションキーの位置を動かしてみたり、操作性の良いレイアウトを求めて皆で色々知恵を絞りました。
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CPUは何を搭載していますか?
井上
PC-MT1のCPUとしては今回、高い処理能力と超低消費電力を誇るインテル社の
『超低電圧版モバイルPentiumIIIプロセッサ 500MHz』
を採用しました。SX1ほどではないのですが、標準で約3.3時間、最大約10時間のロングバッテリーライフを実現しました。この点についてはハード面での工夫もさることながらソフトウェア担当としてもバッテリーを延ばすために各パワーマネージメント関係のコントロールを行い、一番効率よく消費電力を押さえる手法を工夫しました。例えば、CPUの機能の1つであるクロックを切り替える機能を制御したり、各デバイスのアイドル状態を検出してより消費電力の少ないモードに移行させるなどが挙げられます。また、USB CD-ROM ドライブによるブートを始めレガシーフリーを実現し、電源を入れてからの起動時間の高速化やスタンバイ/レジウムの高速化に注力して開発を行いました。これらの成果により、モバイル環境におきましても快適にお使い頂けると思います。
松村
実はMT1の場合CPUに関してはひと波乱ありまして、当初はSX1と同じくトランスメタ社のCrusoeで設計を進めていたんですね。ところがインテル社よりCrusoe に対抗できるCPUがでるとの事で社内で協議を重ねた結果、MT1にはインテル社のCPUの方がよりマッチするだろうという結論が出て、急きょそこでCPUが変わってしまったんです。ある程度設計が進んでいた矢先の出来事だったのでこれは我々回路担当者にとってはとてつもない緊急事態でした。なにせCPUは変わっても開発日程そのものは変わらなかったわけですから、ほとんど1ヶ月くらいの短期間で全く違うアーキテクチャーでの回路設計をしなければならなかったのです。結果として短時間でこれだけのものが作れたことは過去に例がないと自負しています。当然CPUが変わるということは回路だけではなく、基板の実装が変わる事で機構やソフトウェアの方もゴロッと変わるわけですから、回路と機構とソフトウェアと、技術陣みんなが大きく方向転換させられてしまった一大事でしたが、なんとかそれを乗り越えて設計・開発日程を遅延する事なく今に至ることができました。
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素人の質問で恐縮ですが、これだけ小さい商品ですと、限られたスペースをめぐって担当者間で取り合いになるなんてことはないのでしょうか?
松村
実際、“場所”の取り合いは多々有りました。具体的には図面を出した後で「基板のここをちょっとカットして」なんていう回路泣かせの仕様変更の要請なんかも結構ありました。
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ソフト、回路、機構と、技術内の連携が非常に重要なのですね。
古田
もちろんそうです。特に今日ここに集まった人間はアグレッシブで、いい意味で自分のテリトリーを守らないという共通点がありますね。自分の専門分野に閉じこもって勝手なことを言っている方が楽なのですが、みんな割と幅広くスキルがあって相手のゾーンまで踏み込んでいくタイプです。分かっているだけに、商品性向上のために時には日程や技術的に苦しい要請を受けたりもしたのですが・・・。建設的なディスカッションを重ね、オーバーラップした形で仕事を進めていけた点が今回いい商品を作り出せた1つの原動力になっていると思います。
松村
だから今回は「開発ステージが進むにつれて、技術者が欲しい商品からはどんどん遠ざかる」という影の不文律に陥ることもなかった。企画担当者はもちろんのこと、開発に携わった我々みんなが欲しいと思う商品を世に送り出すことができました。
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お話を聞いていて、こういう思想と方法論でものづくりをするからいい商品ができるのだろうなと率直な感想を持ちました。お忙しい中、今日はどうもありがとうございました。
“モバイルコンシャス”というモバイルの新しい可能性を明確に示してくれた今回のPC-MT1・SX1。次は一体、どんな画期的な商品が生まれてくるのでしょうか。メビウスの今後の展開が非常に気になるところです。その糸口を探るべく、
次回最終回
ではこれからのメビウスについて、私たちのモバイルライフの未来について、マクロな視点でお話を伺います。ご期待ください。
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