第1回 メビウスの新コンセプトについて
第2回
PC-MT1/PC-SX1デビューまでの道のり
第3回
PC-MT1/PC-SX1を生んだテクノロジー(1)
第4回
PC-MT1/PC-SX1を生んだテクノロジー(2)
第5回
これまでのメビウス・これからのメビウス
“モバイルコンシャス”というシャープのこだわりを形にできました。
パソコンを担当するようになってからはモバイル路線を追求してきました。
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どちらもこれまでのMebiusとは違う、スタイリッシュで新しい雰囲気を持った製品ですね。まず、それぞれの商品特長を簡単に教えてください。
細川
ありがとうございます。まずPC-MT1の方はとにかく“薄さ・軽さ”にこだわって開発しました。画面サイズは12.1型と大きいのですが、厚さを16.6mm、重さも1.31kgと世界最薄・最軽量を実現しています。しかもタフなモバイルユースに耐える堅牢設計にもなっています。またポップアップ式キーボードという新しい発想のテクノロジーや、当社ならではのXGA低反射ブラックTFT液晶も搭載しています。一方、PC-SX1の方はバッテリー駆動時間とコンパクトさに力点を置いて開発したB5ジャストサイズのノートです。モバイルでも存分に使っていただけるように標準で約5時間・最長約10時間のロングバッテリーライフを実現しているのが一番の特長です。いずれも「シャープが考える究極のモバイルパソコン」と豪語できる自信作に仕上がりました。
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開発の経緯を教えてください。
川森
一言で言うと『モバイルコンシャスをコンセプトにしたパソコンを作ろう』ということだったんです。“モバイルコンシャス”とは、「持ち運ぶ、モバイルするということにとことんこだわった」という意味です。モバイルパソコンというのは使う人によってプライオリティーが明確に変わる商品なんです。とにかく薄く、軽く、カバンにすっぽり入る携帯性に重点を置く人もいれば、そうじゃなくてモバイルは出先でガンガン使えるバッテリー駆動のタフさでしょうという人も一方でいる。モバイルに対する“フィット感”とでも言いましょうか。これはパソコンに限らずモバイル商品全般に言えることなのですが、自分が求めるモバイルの姿は人それぞれ違うんですね。
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「モバイルコンシャスをコンセプトにしたパソコン」ですか。
細川
そうなんです。Mebiusというブランドはスタートして6年目なのですが、当初からノートブックをやる以上、モバイルコンシャスをコンセプトにしたノートをやりたいという気持ちがパソコン事業部の中にはずっとありましたね。この2機種を先頭に、ユーザーの方1人1人の“フィット感”に応えられるようなモバイル商品を今後、精力的に開発していきたいと考えています。
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“フィット感”という言葉について、もう少し詳しく教えてください。
川森
モバイル商品というのはもともと一種独特の商品分野なんです。他の商品を考えてみてください。高いお金を出していいものを買えば、それに見合うたくさんの機能が付いてくるでしょう。付加価値も上がってユーザーの満足度も高まる。
一方、モバイルの分野っていうのは必ずしもそうはいきません。自分の求めるモバイル商品、言い換えれば自分の追求するモバイルの“フィット感”というのは、お金を出しさえすれば必ず手に入るというものではないんです。
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どうしてそういうことが起こるのですか?
川森
「トレードオフ」という関係が必ず発生するんです。「トレードオフ」とは、1つをやめたら別の1つが実現するという意味です。何かを捨てて何かを実現する。モバイル商品は持ち運ぶことを前提にしているので、ある大きさのサイズの中に何と何を盛り込んで、何と何を盛り込まないかということをはっきり決断する必要があるんです。そういうトレードオフがモバイル商品には必ずついて回るんです。
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商品企画の担当者は常に重大な決断を迫られているというわけですか。たいへんそうですね。
川森
私はむしろ逆で、商品企画をする人間にとって、モバイルほど面白い商品はないだろうと思っています。モバイル以外の商品企画は、そんなに面白くないんじゃないかとすら思います。なぜなら「機能を付加すれば、値段も上がる」ということが、メーカーとお客さんとの間で既に暗黙の了解になっているわけですから。お客さんはそれを知った上で、自分の予算に見合う商品を選ぶ。ところがモバイル商品の場合は、先程のトレードオフの関係で商品それぞれに明確な個性が現れてくるわけです。お客さんにとっては、自分のフィット感はどこにあるのか天の声を聞くいい題材になるでしょう。そういう意味でも、モバイル商品ほどモノづくりをするのに面白い商品はないと私は思います。
それと実はもうひとつあって、モバイルは技術者にとっても非常に面白い商品分野なんです。例えばパソコンを例にとると、2kgの重量だったらバッテリー駆動時間は大体2時間位という技術水準がある。それが技術的なブレイクスルーによって重量が1.5kgになった時に、バッテリー駆動時間が減るのではなく、3時間4時間に延びるということが実際に起こりうるんです。さっき何かを捨てて何かを実現することがトレードオフだと言いましたが、技術の進歩で「こっちも実現するし、あっちも実現する」ということにチャレンジできるわけです。技術的なブレイクスルーがトレードオフを次の新しいステップに押し上げるのです。
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お話しを伺っているとモバイルへのこだわりがかなりあるように思われますが。
川森
それは私も含めたシャープという会社全体にあると言えるでしょうね。モバイルへの熱い思いはシャープの技術マンは皆持っています。パソコンだけではなくシャープ中みんなにありますから、入社してからどこかでそんなDNAをワクチン注射されているのかもしれない。それは冗談ですが、「モバイルはシャープ」と呼ばれたい、呼ばせたいという思いはかなり強くあります。パソコンなり、他の商品なり、他社との差別化のポイントもそこにあると考えています。
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今回はPC-MT1、PC-SX1というキャラクターの異なる2商品を同時に発売されるわけですが、それには何か理由があるのですか?
細川
メビウスのデビューは1995年の10月にさかのぼります。A4ノートの初代メビウス<AV1>を市場に初めて投入しました。と言っても当時はまだノートパソコンの市場規模は小さかった。ただ市場の活性化に貢献できたということは1つ言えると思います。B5モバイルノートを立ち上げたのは1998年の6月です。<PC-PJ1>といってかなりのヒットにつながった革命的な商品です。当時、B5といえば10.4型の液晶が主流だった時代に、当社は額縁を削って削って11.3型を搭載したんです。加えて従来のノートパソコンの約半分の薄型・軽量ボディを実現。商品を初お披露目したビジネスショウの会場で、記者の方々が一様に「おぉっ」と驚嘆の声を上げてくださったことをつい昨日のことのように覚えています。
実はその<PC-PJ1>の開発メンバーが偶然にも集まって出来上がったのが今回のPC-MT1、PC-SX1なんです。私は回路系の設計を担当していましたし、川森はその時の営業部長でした。商品企画や技術スタッフも当時、苦労も喜びも共に味わったなじみのあるメンバーでした。<PC-PJ1>発売後、メンバーは散りぢりになったんですけれど、今回縁あってこうして再度結集し、それぞれがあたためてきたモバイルの姿を形にしたら行き着く先が2つあった。その1つがPC-MT1であり、もう1つがPC-SX1ということです。
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すごくドラマチックなエピソードですね。次回、実際の開発のお話しを聞かせていただくのが一層楽しみになりました。今日はどうもありがとうございました。
次回、
第二回
目はPC-MT1、PC-SX1の企画発想段階から商品化に至るまでの商品企画の流れについて、突っ込んだお話しを聞かせていただきます。ご期待ください。
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