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2003年9月3日

浮遊カビ菌・インフルエンザウイルスに続く、『プラズマクラスターイオン™技術※1』の新効能
世界で初めて検証※2
ぜんそくやアトピーの主要原因-ダニアレルゲンを 空中で失活※3
広島大学大学院 先端物質科学研究科との共同研究で検証

シャープは、アレルギー研究で世界的に権威のある広島大学大学院 先端物質科学研究科 分子生命機能科学専攻グループと共同で、当社独自の『プラズマクラスターイオン™技術』が、アレルギー疾患の原因のひとつであるダニの死骸・糞に含まれる浮遊ダニアレルゲンを空中で失活させ、吸入してもアレルギーの症状を抑える効能があることを世界で初めて検証しました。日本の国民の3分の1が何らかのアレルギー疾患があると報告されており(厚生労働省の調査)、実証結果により、こうした人々がアレルギーを発症しにくい環境を実現可能にします。

「プラズマクラスターイオン™技術」とは、プラズマ放電により、空気中の水分子と酸素分子からプラスとマイナスのイオンをほぼ同数つくり、それを空気中に大量に放出することにより、イオンが浮遊カビ菌・インフルエンザウイルスなどを取り囲み、化学反応によって不活化する(=増殖能力を失わせること)空気浄化技術です。当社は、この技術を2000年に開発し、これまで浮遊カビ菌や浮遊インフルエンザウイルスを空中で不活化することを世界で初めて検証するとともに、実用化を進めてまいりました。

今回、2002年4月から、「気管支ぜんそくやアトピーなどの主原因といわれる空中に飛散するダニアレルゲン」に着目し、広島大学大学院 先端物質科学研究科 分子生命機能科学専攻、小埜教授、重田助教授グループと共同で「プラズマクラスターイオン™によるダニアレルゲン失活実証実験」を実施した結果、イオンが空中に浮遊するダニアレルゲン(=実際に浮遊しているダニの死骸・糞による粉塵)に作用し、イオン濃度1万個/cm3の場合、化学反応により約15分で91%失活させ(イオン濃度3千個/cm3の場合でも、約15分で74%失活)、アレルゲンの作用を効果的に抑える働きがあることがわかりました(こちら参照)。

プラズマクラスターイオン™技術の概要

プラズマ放電によって生成したプラスイオン(H+)とマイナスイオン(O2-)は、微粒子に凝集する性質があり、浮遊するカビ菌・ウイルス・アレルゲンなどの有害物質を取り囲みます。その時、化学反応を起こし、活性力の強い水酸基ラジカル(OH)に変化します。これが、有害物質から水素(H)を抜き取ることにより、不活化・失活させるのです。水酸基ラジカルは、抜き取った水素とくっつき、水蒸気(H2O)になって空中に戻ります。このイオンは、森林など自然界に多く存在しているプラスとマイナスのイオンと同じで、人体には全く無害です。また、運転中は次々とイオンが発生し、まわりを水分子で囲まれて気流にのって部屋の隅々にまで届くので、すぐに消えてなくなることはなく、効果は持続します。さらに、カビが増殖する際のカビ臭さやタバコの煙※4に含まれるNO(一酸化窒素)、ニオイ成分(酢酸、スチレン)に対しても分解効果があります。
これを利用した空気浄化方式は、「空気の汚れをファンの力で吸い込んでフィルターでろ過する待ち受け型の方式」に比べ、室内全体の空気を効果的に清浄するので、フィルターで吸いこめずに淀みやすい空気に対しても直接働きかけます。
そして、「プラズマクラスターイオンTM発生装置」は、フィルター方式のように汚れて効果が落ちたり、交換する必要がなく、空気中の水分を使い、大幅な低消費電力(約0.5W。年間連続運転しても約100円)を実現した「環境対応型デバイス」です。

  • ※1 プラズマクラスター、プラズマクラスターイオンおよびPlasmaclusterはシャープ株式会社の商標です。
  • ※2 2003年9月3日現在、プラズマクラスターイオン™技術による。
  • ※3 アレルゲン(抗原)とIgE抗体の結合を阻止し、アレルギー反応をおこさないようにすること。
  • ※4 タバコの煙に含まれる有害物質(一酸化炭素)は除去できません。

ダニアレルゲン失活検証方法

1.原理実験

円筒容器内にプラズマクラスターイオン™発生素子を設置したものとしないものを2つ用意し、両容器にダニアレルゲンを噴霧します。そのあと両容器から採取したダニアレルゲンをアレルギー患者の血清抗体と反応させ、それぞれのダニアレルギー反応性を比較する実験を行いました。

結果、空間中のイオン濃度約10万個/cm3の場合、ダニアレルゲンは、試験を実施した18人のアレルギー患者の血清抗体においてアレルギー反応が低下することを確認(図1)。これにより、プラズマクラスターイオン™によるダニアレルゲンの失活効果を実証いたしました。

ダニアレルギー患者18人の血清抗体を用いて、ダニアレルギー反応性をELISA法(酵素免疫吸着法)で評価を行いました。 18人の血清抗体において、ダニアレルゲンが失活されていることからアレルギー反応の低下が見られました。

原理実験

2.実使用模擬試験

実際に室内に浮遊しているダニ粉塵(精製ダニアレルゲンではない。実際のダニの死骸・糞の粉塵を使用)を用いて、プラズマクラスターイオン™によるダニアレルゲン失活効果を検証しました。

結果、空間中のイオン濃度1万個/cm3の場合、約15分で浮遊ダニアレルゲンを空中で91%失活させることを確認(図2)。さらに、空間中のイオン濃度3千個/cm3の場合でも、約15分でダニアレルゲンを74%失活させることを確認しました(図3)。これにより、プラズマクラスターイオン™空間では、実使用環境で浮遊しているダニ粉塵に対しても、アレルゲン失活効果があることを実証いたしました。

実使用模擬試験
アレルギー症状のしくみ

アレルゲンが体内に入ると、IgE抗体が生成され、肥満細胞と結合する。この結合したIgE抗体と再び入ってきたアレルゲンとが架橋し、ヒスタミンなどの刺激物質が放出され、のどや鼻の粘膜を刺激することで、せき・くしゃみ・鼻水などのアレルギー症状を発症する。

アレルギー症状のしくみ
アレルゲン失活のメカニズム

アレルゲン失活のメカニズム

プラズマクラスターイオン™が浮遊アレルゲンを取り囲み、強力な活性物であるOH(水酸基ラジカル)に変化。アレルゲンのIgE抗体結合部位を分子レベルで変性させるので、アレルゲンが体内に入ってもアレルギーは発症しない。

ダニアレルゲン失活効果

プラズマクラスターイオンを作用させた場合

プラズマクラスターイオンを作用させた場合

アレルギー反応なし。刺激物質は放出なし。

 

プラズマクラスターイオンを作用させない場合

プラズマクラスターイオンを作用させない場合

アレルギー反応あり。せき・くしゃみ・鼻水などの元になる刺激物質を放出している。

用語説明

肥満細胞: 粘膜上皮や組織中に存在し、アレルギーを起こすヒスタミンなどの刺激物質を生産する細胞(直径10~30μm)で、表面にはIgE抗体が付着している。アレルゲンがIgE抗体と結合すると、刺激物質が細胞外に放出され、アレルギー反応を引き起こす。
IgE抗体: 異物(抗原)と結合し、アレルギー反応を起こす。
アレルゲン(抗原): アレルギー反応をひき起こす異物のことで、ダニの粉塵・花粉・真菌など。
感作: アレルゲンが体内に入るとIgE抗体が生成され、肥満細胞と結合した状態になること。

現在、ダニアレルゲンへの対策は、一般的に「掃除や換気をこまめにする」「ダニの温床であるカーペットをやめる」、医療分野では「抗ヒスタミン剤・ステロイド剤などによってアレルギー症状を抑制する」などが実施されています。

当社は、浮遊カビ菌やインフルエンザウイルスはもちろん、「世界で初めて、空中で積極的に浮遊ダニアレルゲンを失活するアレルギー対策技術」として、「空気のあるところすべてをプラズマクラスターイオン™空間に」の考え方をもとに、異業種も含めたさまざまな分野で積極的に事業展開してまいります。

「プラズマクラスターイオン™技術」は、2000年9月に浮遊カビ菌を空中で不活化することを(財)石川県予防医学協会で検証、2002年9月には、(財)北里環境科学センターと共同で、浮遊インフルエンザウイルスを空中で不活化することを世界で初めて検証し、社会的な話題になりました。また、海外でも、浮遊カビ菌については中国の上海市予防医学研究院、ドイツのリューベック医科大学など、世界の公的研究機関で効能を検証しております。

これからも世界の大学や先端研究機関と協力し、先端の学術研究によって科学的データを検証する取組みを強化してまいります。

プラズマクラスターイオン™技術の効能

 

対象物質 種  類 実証研究機関
アレルゲン ダニアレルゲン
(ダニの死骸・糞による粉塵)
広島大学大学院
先端物質科学研究科
[2003年9月]
ウイルス インフルエンザウイルス(風邪)
コクサッキーウイルス(夏風邪)
(財)北里環境科学センター
[2002年9月]
細 菌 MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)
大腸菌
(財)北里環境科学センター
[2002年9月]
(財)石川県予防医学協会
[2000年9月]
真 菌 クラドスポリウム(クロカビ) (財)石川県予防医学協会
[2000年9月]

広島大学大学院 先端物質科学研究科 分子生命機能科学専攻 分子生命化学教室の紹介

先端物質科学研究科は、先見性に富む諸研究を遂行するとともに、学際的かつ総合的な教育を行い、新たな視点から問題の本質にアプローチできる高度な専門技術者と創造的な若手研究者を育成することを目的として設立された。その中の分子生命機能科学専攻 分子生命化学教室は、生命体の恒常性維持機構に関わる新規分子群(免疫応答調節分子)の単離、およびその作用メカニズムの解明を進めるとともに、同分子群の高分子医薬(アレルギー治療薬、アレルギー診断薬など)への応用を目指した開発研究を行っている。

小埜和久 教授の研究分野

・生命体の恒常性維持機構で重要な役割を果たす免疫制御因子の構造と機能の解明
・免疫担当細胞の情報伝達に関する解析

重田征子 助教授の研究分野

・生物特に動物の非自己に対する防御機構の解明
・ダニおよびスギ花粉アレルギーに対する高性能ワクチンの開発

参考資料

プラズマクラスターイオン™発生装置

プラズマ放電によって空気中の水分子と酸素分子から、+と-のイオン(水の分子で取り囲まれた+と-のイオン=クラスターイオン)を1cc当たり数万個単位で発生させ、ファンの気流にのせて空気中に放出。 +イオン(H+)と-イオン(O2-)は、空気中では、まわりを水の分子(H2O)で取り囲まれて、気流にのって部屋の隅々に放出される。運転中は次々イオンが発生するので、その数や効果が減ることはない。

プラズマクラスターイオン発生装置

プラズマクラスターイオン発生装置

浮遊菌不活化のメカニズム

+イオン(H+)と-イオン(O2-)が浮遊カビ菌の表面に凝集し、そこで化学反応し、強力な活性物であるOH(水酸基ラジカル)に変化。
OHは浮遊カビ菌の細胞壁の中からH(水素)を抜き取り、不活化する。

浮遊菌不活化のメカニズム

浮遊インフルエンザウイルス不活化のメカニズム

+イオン(H+)と-イオン(O2-)が浮遊ウイルスの赤血球凝集素(生物に付着し感染のトリガーになる表面タンパク質)を取り囲み、強力な活性物であるOH(水酸基ラジカル)に変化。赤血球凝集素内にあるH(水素)を抜き取り、化学反応し、水(H2O)に変化。赤血球凝集素は分子レベルで破壊されるので、ウイルスが体内に入っても感染しない。

浮遊インフルエンザウイルス不活化のメカニズム

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