

シューティングゲーム「VALORANT」においてプラズマクラスター技術でプロeスポーツ選手のパフォーマンス向上効果を実証


シューティングゲーム「VALORANT」においてプラズマクラスター技術でプロeスポーツ選手のパフォーマンス向上効果を実証
シャープは、人の周りの「空気」を浄化することを目指してプラズマクラスター技術を開発し、25年間、これまで多くの効果の実証を進めてまいりました。
近年は、ヒトの周りの空間の空気を浄化するだけではなく、そこに居る人や生き物にも良い影響を与えたい、それが本当の快適ではないかとの考えから、ヒトなどへの効果検証にも力を入れてきました。
そして今回、プロeスポーツチームQT DIG∞の協力を得て、シューティングゲーム「VALORANT」で効果検証を行い、プロ選手も驚くような結果が得られました。
『eスポーツ(Electronic Sports)』とは、コンピュータゲームやビデオゲームを使った競技のことで、個人またはチームで技術や戦略を競い合う新しいスポーツの形です。
シューティング、スポーツゲームなど多様なジャンルがあり、世界中でプロリーグや国際大会が開催されています。
日本でも近年注目が高まり、教育や地域振興の分野でも活用が進んでいます。
「VALORANT」は、5対5で戦う競技性の高いタクティカルシューター※1で、個性豊かなキャラクター「エージェント」と高度な戦略性が魅力のFPS※2です。
ライアットゲームズが開発・運営している本作は攻撃側と防御側に分かれ勝敗を競います。eスポーツシーンでも人気が高く、戦略・反応・判断力が問われるタクティカルFPSとして世界中のプレイヤーに支持されています。
VALORANT公式大会の様子
QT DIG∞は福岡市を拠点とするプロeスポーツチームで、PC・モバイルを問わず、国内で特に人気の高いゲームタイトルに参入し、それぞれトップクラスの成績を収めています。

西日本工業大学 工学部 総合システム工学科 博士(学術)
人間工学、認知心理学、スポーツ心理学、複数対象追跡(MOT)
eスポーツ、エクサゲーム、視覚探索
スポーツビジネス概論 5(分担執筆) 2024年, 叢文社
eスポーツの科学(分担執筆) 2021年, ベースボール・マガジン社
| 目的 | プラズマクラスターイオンがeスポーツパフォーマンスへ及ぼす影響を検証 |
|---|---|
| 被験者 | QT DIG∞に所属するVALORANTのプロ選手 延べ10名 |
| 実施日 | 試験1回目 2024/4/25、4/26 試験2回目 2024/11/8、11/9 |
| 使用ゲーム「VALORANT」 |
|
| 試験方法 |
|
試験の様子
2処置2期クロスオーバー試験のフローチャート
同じ回の試験では、送風のみとプラズマクラスターイオンありの条件で使用するエージェントやマップをそろえた。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| Kill | 相手を倒した数。多ければ多いほど良い評価。 |
| Death | 相手に倒された数。少なければ少ないほど良い評価。 |
| Assist | 味方のKillをサポートした数。(バラツキが大きい) |
| ADR | 各ラウンドでの相手に与えた平均ダメージ量。<勝利に最重要な指標 |
| K/D | Kill/Death 1以上あると、自分が倒されるより多くの相手を倒していることを表す。 |
| KDA | (Kill+Assist)/Death プレイヤーの貢献度や生存率を端的に示す指標。 |
1ラウンド当たりに与えた平均ダメージ量。
銃撃によるダメージやアビリティのダメージが換算される。
キルを取るにまで至らなかったダメージもカウントされるため、貢献度が包括的に表される指標。
※ 敵の体力は100~150
K/Dとは、「キルデス比(Kills/Deaths Ratio)」の略で、キル数(敵を倒した回数)をデス数(自分が敵に倒された回数)で割って算出される指標。
プレイヤーの平均キル数を示す指標であり、この数値が高いほど、より効率的に敵を倒し生存率が高いことを意味します。
送風のみと比較して、プラズマクラスターイオンありの条件でADR、K/D、KDAの上昇を確認。
*:p < 0.05、†:p < 0.10
プラズマクラスターイオンありの条件で、被験者が能力の向上を実感している傾向を確認。
結果は試験1回目と2回目(合計6試合)の平均値。(0が最悪、100が最高)
今回の検証結果から、プラズマクラスターイオンによる効果は、パフォーマンススキルの中で、ゲーム内での立ち回り、状況判断スキル(マクロ)に効果的であると推察する。

試合中に指示を出し、認知リソースをより多く使用する選手のスタッツが特に上昇。
| 指数 | アンケート(チーム平均) | |
|---|---|---|
| 送風のみ | プラズマクラスターイオンあり | |
| 集中力 | 57 | 61 |
| 冷静さ | 61 | 60 |
| 直感力 | 57 | 66 |
| 視野 | 55 | 59 |
主観指標:アンケート
認知に関わる4項目のうち特に「直感力」「視野」の上昇を示唆。
| 指標 | ゲームスタッツ(チーム平均) | ||
|---|---|---|---|
| 上昇値 | 送風のみ | プラズマクラスターイオンあり | |
| ADR | 18 | 122 | 140 |
| K/D | 0.17 | 0.88 | 1.05 |
| KDA | 0.26 | 1.23 | 1.49 |
客観指標:ゲームスタッツ
優れたマクロを発揮した結果、勝利に重要なスタッツが向上。
熟練したeスポーツ選手は、オフィスワーカーの3~4倍程度のキーボードやマウス操作をおこなっており、その回数は1分間に500~600回とも言われます。さらにその操作量と複雑さから、eスポーツのプレイには高度な集中力と判断力が求められることがわかります。
今回、プラズマクラスターイオンの導入後に、高水準のスキルを安定して発揮できるプロ選手において、一部のパフォーマンス指標に向上が見られた点は極めて注目に値します。
今後、プラズマクラスター技術がeスポーツだけでなく、集中力や判断力を要する他の競技や教育現場、日常業務などでも応用されることを期待します。
eスポーツは通常のスポーツに比べても練習や試合の時間が長いため、持続的な集中力はもちろん、長いプレイ時間の中で瞬時にパフォーマンスを発揮する必要があります。
プラズマクラスターイオンを導入するだけで、選手の認知力や判断力が直に反映されるADRやK/Dが上昇したことは驚くべき結果ですし、このスタッツの上昇力は、試合を決める1ラウンドの取得を左右するほどの効果があることを表していると思います。
今回の検証や今後の取り組みを通して、eスポーツへ広く応用できるよう技術開発が進むことを期待します。
上記2つのコメントは、当社から依頼し、いただいたコメントを編集して掲載しています。
実証実験にご協力いただいた、ikedamaruコーチ、Misaya選手、KIPPEI選手にお話を伺いました。(取材日は2025年9月3日)
このたびは、実証実験にご協力いただきありがとうございました!ところで、Misaya選手とKIPPEI選手はとてもお若く見えます。
はい、私が23歳でKIPPEIは17歳です。
プラズマクラスター技術の実証実験をすると決まった時、最初はどういった印象でしたか。正直に仰っていただいて結構です。
正直、当初は「プラシーボ効果みたいなものなのかな」と思っていました。
試験機の大きさもペットボトルくらいだったので、「本当に効果があるのかな」というのが初めて見たときの印象でした。
僕も同じですね。それと、風が顔に当たり続けるので目とかが乾燥するんじゃないかなと思っていました。
僕も正直に言うと、効果に関して当初は特に何も思っていませんでした。
実証実験に参加してみて印象は変わりましたか?
実験を終えて結果を確認してみて、効果はあったんだなと感じました。
今回の実験のために、プラズマクラスター有りと無しの両方での試合が必要で、それ以外の条件はすべて同じにしなければなりませんでした。効果を確認するためにも相手には強豪を選びましたが、この相手とマップなどの試合条件をそろえるのは実はすごく大変でした。
トップレベルチームとの試合は貴重な機会ですので、マッチングするだけでも難しいのです。しかし、実際にそれができたからこそ、「この実験は効果がある」という裏付けになったと思います。対戦相手との相性に関係なく、条件を合わせることができたので、私自身、効果があると信じて言える要素になった。それが今回の実験で良かった点だと感じています。相手と試合をして、また次の日、同じ時間に同じマップで試合をする。これは凄く難しいことなんです。それができて実際に検証できたというのが良かったと思います。
実証実験では効果があったという結果がでているのですが、実際に何か「感じる」ことはありましたか。
空気が出ているだけだったので「感じる」のは難しかったんですが、実際結果として数値が出たので、「なるほど、効果はあるのかな」と思っています。
もっと使ってみて、直接的に効果を「感じる」かは自分の感覚的なもので確かめていけたらなって思っています。
僕も同じです。もっとやってみないと「実感」はわかないかなとは思っています。
実は、練習が終わったあとに他のコーチやMisayaと「今日これプラズマクラスターイオン出てたんじゃない?」と話したことがあったんです。
うんうん、確かにあったよね。感覚的にね。
「なんとなく試合の内容良かったよね」っていうフィーリングは感じ取っていて、「今回出てたんじゃない?」っていう話をしていたんです。実験完了後にスタッフさんを通していつ入っていたか教えてもらったら、実際に良かった日の方にでていたので、「お、結構効果あるのか?」って思いました。
全体的に個人のパフォーマンスがすごく良かったっていうよりも、チーム全体の試合の内容が良かったので、なにか僕らにも見えないような、小さいコミュニケーションの一つ一つの精度が上がったのかなと思いました。
率直な感想ありがとうございます。ところで、普段みなさんはどのような練習をされているのでしょうか。
普段は昼の1時に集まって、ウォーミングアップを1時間して、そこから戦術のミーティングを1時間ほど行います。そこから練習試合を4試合。休憩して、2試合して、その間にフィードバックを行います。大体夜の10時半くらいまで練習します。それを週5日行って、試合が近くなると週6日になります。そこから個人練習をして、終わるのはだいたい深夜1時半とか2時とかですね。
すごく長い時間練習されているんですね。
でも今はシーズンオフなので、普段頑張っているから力を抜く人は抜いています。そこは人によるかもしれません。僕は休み休みやっています。
今回のシーズンは去年の10月末に始まって、今年の7月に終わりました。オフシーズンは2ヶ月くらいですね。
チームのことについて教えてください。QT DIG∞というのはどんな特徴を持ったチームでしょうか。
団結力というか、仲の良さとチーム力を売りにしているチームなのかなと思っています。仲が良くて明るい雰囲気というのは誰に聞いても返ってくる答えだと思います。
日本の中だったら、結構堅実というイメージです。結構古いじゃないけど、固まって動こうというか、ルールとか規律とかを大事に考える方だと思います。
今のコメントについてコーチはいかがですか?
おおむねその通りだと思います。僕らは他のチームより自由度は低い。決まったことをちゃんとやろうというチームなので、規律とかルールに縛られているとも言えるけど、逆に言えば5人の意思※がちゃんとそろっていると言えると思います。
プロとして最低限言わなければいけないコミュニケーションはあったりしますが、その場で終わらせるようにしているので、ギスギスするということはないですね。
※ 今回インタビューに応対していただいたのは3名(選手2名コーチ1名)だが、実証実験に参加していただいた『VALORANT』チームは全員で5名
今回空気のことに関していろいろとご協力いただいたのですが、この場の3名の中で「空気を読める人」「読めない人」を選んでいただいてもいいでしょうか。
空気を読めるのは絶対KIPPEIですね!空気を読めないのは、Misayaです!
QT DIG∞のメンバーの皆さん、最後は変な質問にもかかわらず笑顔で答えていただき、ありがとうございます!
インタビューありがとうございました!
(左から)ikedamaruコーチ、KIPPEI選手、Misaya選手
これまで、プラズマクラスター技術における、高い集中力を要するパフォーマンス向上の効果では、例えば、車の運転における効果を実証してきました。
今回の研究で、勝負を掛けて、同様に高い集中力と判断力が求められるeスポーツ VALORANTで、かつ、熟練したスキルを有するプロ選手に対して、パフォーマンス向上効果が確認できたことは、プラズマクラスター技術が、高い集中力を求められるケースにおいて効果を発揮することを改めて示した形になると考えております。

我々は、引き続きプラズマクラスター技術について、人の周りにある「空気」と、
そこにいる「ヒト」への効果の実証を進めて参ります。
そしてeスポーツ分野においては新たなパートナーとともに、
プラズマクラスター技術の新しい可能性を追求して参ります。