1956年生まれ。月刊アスキー編集主幹。株式会社アスキー取締役。コンピュータプログラマを経験した後、1985年アスキー入社。1990年より、パソコン総合誌「月刊アスキー」編集長となる。雑誌編集のかたわらミリオンセラーとなった『マーフィーの法則』など書籍も手がける。著書に、朝日新聞に連載した『遠藤諭の電脳術』、黎明期の日本のコンピュータ技術者にインタビューした『計算機屋かく戦えり』などがある。ウェブサイト「先見日記」などに連載中。
モバイルというのは、どうも和製英語である。
英語の「Mobile Computing」と、その意味が微妙に異なるからだ。
・自宅のご飯 → 家庭の中のパソコン
・食堂の料理 → 企業で使うパソコン
・おにぎり・お弁当 → モバイル
こう対応すると思うのだが、英語の「Mobile Computing」は、岡持ちで運んでくる店屋物なんかも、その範疇に飲み込んでしまっている。日本のモバイルは、おにぎり・お弁当だから、ポケットに入ったり、カバンの中にラクラク入るものを指している。というよりも、英語の「Mobile Computing」に当たる概念が日本では定着していない。
たぶん、日本人が車で出かけて仕事するというスタイルが米国ほど多くはないとか、日本人の平均的体力が岡持ち系の重さが何キロもあるようなパソコンに向いていないというような理由があるだろう(実際、重いカバンを毎日持ち歩くと腕が伸びてしまうらしい)。
もっとも、これは四角四面の当たり前な分析であって、私は、モバイルって、もっといろいろといい部分があると思う。
たとえば、いまサブノート(薄型・軽量などいちばんモバイルっぽいパソコン)が人気だというのも、その理由は、言ってしまえばスターバックスコーヒーによるところが大きいと思う。
要するに、モバイルしてパソコンが使える場所が増えてきているからサブノートが注目されてきているのだ(サブノートは従来も各社から売られてきたが、いまほど各社一斉に新機種を揃えてきたことはない。2003年12月現在)。
もちろん、スタバでなくてもいいのだが、やっぱり、スターバックスコーヒーの登場が、オフィス街にもたらした影響というのはとっても大きいのではないか?
たしか、まだ世界中のほとんどの人がその名前すら聞いたことがなかった時代に、Windows 95のデモビデオ(?)の電子決済のシーンで出てきたシアトルのコーヒーショップは、スタバではなかったか(私の記憶では−−シアトルが本社のマイクロソフトである)。そしてまた、米国で、ドイツテレコム系の通信事業社であるT-Moblieが、ホットスポットのサービスを大々的に展開したのもスターバックスである(私も、固定料金がかからないので米国出張用にIDを持っている)。
なぜかパソコンと縁のあるスタバだが、それよりも、なぜスターバックスが爆発的に世界中に広がったのかという理由を考えてみるべきである。
映画『ユー・ガット・メール』のDVDは、パソコンだけで見られる特典映像が特徴の1つだったが(当時パソコンでDVDを再生できた人は多くはなかったから観た人は少ないかもしれない)、その中でノーラ・エフロン監督がスタバを紹介している。いまでは誰でも知っているスターバックスだから、なんだか不思議な感じがするインタビューなのだが、彼女は、「ニューヨーカーが仕事から離れた自分の居場所を見つけた」といった意味のことを言っていたと思う。
そうなのだ、サブノートは、そこで“自分の世界”を持ち込める道具になっているのである。
壁紙1枚でも、好きな音楽でも、お気に入りのサイトのブックマークの入ったブラウザでも、もちろん、仕事関係のことだって何だってあるだろう。そして、まさに『ユー・ガット・メール』の世界。デジタルが、心の安らぎとか、人と人の繋がりの世界を強力にサポートしてくれる。
デジタル機器は、ともすれば「ウェポン」(武器)などと言われてきた。そういう領域で捉えきれないところに、いまのモバイルというのは来ている。
1. モバイルは快感原則の上にある
2.
モバイルは時間と関係する機械
3.
ムラマサのMM2(PC-MM2-5NE)に触ってみた
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